第7回UNEP窒素作業部会会合でGEWについて発表

  2025年7月1日から2日にかけてオンラインで開催された第7回UNEP窒素作業部会会合において、CEARACの指定を受けている(公財)環日本海環境協力センター(NPEC)の寺内元基副主幹研究員がビデオ講演を行いました。

  開催に先立ち、UNEPから多くの国が窒素を含む栄養塩のモニタリングに課題を抱えている現状を踏まえ、CEARACが開発したクラウドベースのアプリ「Global Eutrophication Watch (GEW)」をモデルケースとして紹介してほしいと依頼がありました。

  同研究員は、アジェンダ6「窒素汚染のモニタリング」のセッションにて、「Global Eutrophication Watch 改訂版とSDG 指標 14.1.1a に関する国別報告システムのプロトタイプ開発」と題して、過剰な栄養塩によって引き起こされる海洋・沿岸の富栄養化を地球規模で評価するツールであるGEWのデモンストレーションを実施しました。さらに、GEWを用いたSDG 14.1.1a「沿岸富栄養化指数」に関するプロジェクトも紹介しました。

  CEARAC の使命の一つは、リモートセンシング技術を用いた環境モニタリング評価ツールの開発であり、衛星データの分析は複雑であることから、CEARACは長年にわたり、専門的なスキルを持たない人でも衛星データを利用できるよう取り組んできました。同研究員は、衛星リモートセンシング技術を用いてクロロフィルa(CHL)を測定することにより、地球規模で富栄養化状況をマッピング・評価することが可能となることを説明しました。

  2021年にCEARACが開発したGEWは、大規模な環境データを分析するGoogle Earth Engineを活用しており、CHL濃度のトレンドとレベルをもとにデータを効率的に処理し、富栄養化の兆候を地図上で可視化します。このツールにより、富栄養化に関して対象海域を、①健全な海域、②回復中の海域、または③高リスク/深刻な影響を受けている海域の3種類の海域に迅速に特定できます。GEWは数クリックで20年以上蓄積されたデータを数秒で分析し、富栄養化の兆候を評価します。

  同研究員は、GEWのデモンストレーションを行い、有明海、渤海、タイ湾など、様々な海域の事例を紹介しました。GEWの地図からは、小さな湾の沿岸でも富栄養化の兆候が詳細に分かり、また懸濁物質の多い沿岸域でも改良したデータにより正確な富栄養化状況が示されました。

  プレゼンテーションの最後に、同研究員は自身がリーダーを務めるJAXA資金による共同研究プロジェクト(2025~2027年)に言及しました。このプロジェクトは、GEWをベースにJAXAの衛星GCOM-C「しきさい」に搭載されたSGLIセンサーからのCHLデータを利用して、国・地域レベルのSDG 14.1.1a「沿岸富栄養化指数」を開発するものです。このプロジェクトにより、GEWが国連のSDGs目標14「海の豊かさを守ろう」に貢献することが期待されます。

2日間にわたる会合には、政府機関、国際機関、学術界、NGO、および子ども・若者の団体から112名の参加者が集まり、示唆に富む議論と有意義な交流が活発に行われました。

第7回UNEP窒素作業部会会合の公式ウェブサイト:

https://www.unep.org/events/working-group-meeting/seventh-meeting-unep-working-group-nitrogen

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