富栄養化状況評価

富栄養化状況評価手順書の開発

CEARAC は、リモートセンシング技術を活用して富栄養化の状況を評価するための手法を開発してきました。2009年に「NOWPAP 地域における栄養塩の陸域発生源の評価を含む富栄養化状況の評価手順書(NOWPAP 共通手順書)」[1]を開発しました。そして、NOWPAP地域の選定海域でケーススタディを実施して手順書の妥当性の検証を重ねながら2013年及び2015年に改訂版を出しました[23]。2013年に改訂した「NOWPAP共通手順書」では、富栄養化状況の評価手順を2段階に区分しました。第1段階のスクリーニング手順(第1次診断)では、必要最小限の3つのパラメータを用いて富栄養化状況について予備的な評価(Preliminary assessment of eutrophication)を行います。第2段階の包括的手順(第2次診断)では、第1次診断により抽出された富栄養化の兆候が認められる海域のみを対象として、さらに詳細な分析を行って総合的な富栄養化評価を行います。第1次診断のスクリーニングにより対象を選別することで、第2次診断を効率的に実施することができます。さらに、NOWPAP共通手順書2015年改訂版では評価項目を見直し、第1次診断のパラメータの1つである「栄養塩の滞留濃度」を「COD(もしくはTOC)の長期トレンド」に変更しました。

参考文献

[1] NOWPAP CEARAC, “Procedures for assessment of eutrophication status including evaluation of land-based sources of nutrients for the NOWPAP region”, (the NOWPAP Common Procedure , 2009).
[2] NOWPAP CEARAC , “Procedures for assessment of eutrophication status including evaluation of land-based sources of nutrients for the NOWPAP region” ,  (the NOWPAP Common Procedure 2013 Revised Edition)
[3] NOWPAP CEARAC, “Procedures for assessment of eutrophication status including evaluation of land-based sources of nutrients for the NOWPAP region “, (the NOWPAP Common Procedure 2015 Revised Edition)

富栄養化状況の予備評価

CEARACでは、「NOWPAP共通手順書」のスクリーニング手順(第1次診断)にしたがい、次の3つの必要最小限のパラメータを用いてNOWPAP海域における富栄養化状況を予備的に評価しました。
(1)化学的酸素要求量(COD)または全有機炭素(TOC)のトレンド
(2)赤潮と貧酸素水塊の発生
(3)衛星観測によるクロロフィル-a(Chl-a)濃度

「富栄養化状況予備評価」の結果は、CEARAC Web-GIS: https://cearac.nowpap.org/map-webgis/で見ることができます。
〇の色により、各エリアの富栄養化状況が分かります。
問題なし:3つのパラメータのうち1つのみで富栄養化の兆候を示す場合。
要注意:3つのパラメータのうち2つで富栄養化の兆候を示す場合。
富栄養化:3つのパラメータ全てで富栄養化の兆候を示す場合。
改善傾向:3つのパラメータのうち(1)または (2)で富栄養化状況が改善したことが示される場合。

この第1次診断により「要注意」または「富栄養化」と判定されたエリアは、第2次診断の包括的評価の対象となります。

各パラメータの評価結果もCEARAC Web-GISで見ることができます。
(1) CODのトレンド
CEARAC Web-GISの地図上の△は、CODのモニタリング地点です。
トレンドの色分けは、が増加、が減少、が変化無しです。
でマークされたエリアは富栄養化の兆候有りとみなします。
NOWPAP海域内のモニタリング定点におけるCODの年間平均値を出し、
Mann-Kendall 検定により長期的なトレンドを把握しています。

 

 

 

(2) 赤潮と貧酸素水塊の発生
CEARAC Web-GISの地図上の『○』の大きさや数字により、
赤潮発生の空間分布が理解できるようになっています。
赤潮による漁業被害が発生したエリアは明るい赤のマークで示され、
漁業被害のないエリアは暗い赤のマークで示されています。
地図上の魚の死骸のマークは貧酸素水塊の発生を示しています。
それぞれのマークをクリックすると、発生に関する詳細な情報がえらます。
地図上の対象海域において、過去3年間に赤潮または貧酸素水塊の発生が1回以上あった場合、富栄養化の兆候有りとみなされます。

 

 

(3) 衛星観測によるクロロフィル-a濃度(衛星Chl-a)
CEARAC Web-GISの地図上で、NOWPAP海域の衛星Chl-a濃度が確認できます。
富栄養化状況が衛星Chl-aのレベルと傾向(トレンド)を組み合わせた下表の6分類で色分けされています。
分類方法は、Chl-a濃度のレベルを基準値5 μg/L(Bricker et al.(2003)のミドルレベル(5–20 µg/L)の下限値から採用)として設定し、5 μg/L以上を「高」、5 μg/L未満を「低」の2つのカテゴリーに分けます。
一方、衛星画像の各ピクセルの年間最大値からトレンドを出し、「減少」「変化無し」「増加」の3つのカテゴリーに分けます。
6分類のうち、HNとHIは富栄養化の兆候を示しています。 特に、LIとHIはChl-aが増加傾向にあり、富栄養化が悪化する又は富栄養化すると評価されたエリアで注意が必要です。

 

 

CEARACの富栄養化状況評価に関する活動に参画している専門家 2017年現在

Dr. Zhiming YU

Professor

Chinese Academy of Science Institute of Oceanology, China

Dr. Zaixing WU

Professor

Chinese Academy of Science Institute of Oceanology, China

Dr. Yasuo FUKUYO

Professor Emiritus

University of Tokyo

Dr. Joji ISHIZAKA

Professor

Institute for Space-Earth Environmental Research, Nagoya University

Dr. Osamu MATSUDA

Professor Emeritus

Hiroshima University

Dr. Genki TERAUCHI

Senior Researcher

Research & Study Department, Northwest Pacific Region Environmental Cooperation Center

Dr. Chang-kyu LEE

Senior Scientist

Fishery and Ocean Information Division
National Fisheries Research and Development Institute, Korea

Dr. Seung Ho BAEK

Principal Researcher

Risk Assessment Research Center,
Korea Institute of Ocean Science & Technology, Korea

Dr. Pavel TISHCHENKO

Leader Scientist of Hydrochemistry Laboratory

V.I. II’ichev Pacific Oceanological Institute,
Far Eastern Branch of the Russian Academy of Sciences, Russia

Dr. Vladimir SHULKIN

Head

Laboratory of Geochemistry, Pacific Geographical Institute,
Far Eastern Branch of Russian Academy of Sciences, Russia

 

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