国連環境計画(UNEP)のNOWPAPの活動拠点の一つであるCEARAC(NPECが指定されています)の今後の活動方針を議論する初めての専門家会議(フォーカルポイント会合:FPM)が開かれました。 今回の会合では、NOWPAP地域における各国・関係機関の取組状況が報告されるとともに、それを踏まえて今後CEARACがどのような活動をすべきかについて本格的に議論され、当面HAB及びリモートセンシングに関する専門的なワーキンググループ(今年夏~秋に開催予定)で議論すべき課題が打ち出されました。また、CEARACの2003年の活動計画及び委任事項も採択されました。
※CEARACが主導する活動のうち、「特殊モニタリング」の中では「リモートセンシングによる海洋観測」を、「沿岸環境評価」の中では「赤潮を含む有害藻類の増殖(HAB)」を当面の優先課題として取り上げることが、これまでの国際交渉によって合意されています。
1. 日時
2003(平成15)年2月25日(火)~27日(木)
2. 場所
タワートリプルワン 富山国際センター会議室 (富山市牛島新町5-5)
3. 参加者
・中国、韓国、ロシア、日本の各国の代表(フォーカルポイント)・国連環境計画(UNEP)本部の代表、海洋関係の国際機関・プロジェクトの専門家・他のNOWPAP地域活動センターの所長など、約20人の専門家が参加しました。
4. 会合の内容
(1) 開会(25日10:00)
10:00に開会が宣言され、UNEPのクラウス・テプファー事務局長の挨拶が代読されたあと、中沖富山県知事が歓迎のことばを述べました。
(2) NOWPAP各国や国際機関の活動状況の報告(25日)
UNEP代表者が、これまでのNOWPAPにおける活動経過や今後の展望について説明しました。
中国代表が、中国黄海沿岸における赤潮の発生状況やリモートセンシング衛星データの海洋観測への適用について発表を行いました。この中で、中国では、1990年代以降になって急激にHABによる被害が増えていることが報告されました。
韓国の代表(国立水産科学院海洋環境管理科チェ・ヘグ博士)は、国内で赤潮などのHABによる漁業被害が大きな問題となっていること、韓国では海洋観測のために、アメリカの衛星のほかにインドの海洋観測衛星も利用していることなどを報告しました。
ロシアの代表(ロシア科学院極東海洋学研究所衛星海洋学部長レオニド・ミトニク博士)は、ロシアや欧米が運用しているマイクロ波センサーの海洋観測データによって、例えば不法投棄による油汚染、水温、プランクトン濃度の差、水と大気の対流、流氷の動きなど実にさまざまな海洋現象が解明されていることを紹介しました。また、現在ロシアが計画している小型の衛星群によるレーダー観測計画を発表しました。
日本からは、東京大学の福代康夫助教授が、有害藻異常繁殖の研究や瀬戸内海などの赤潮の経験を活かした対策実施状況等を報告し、宇宙開発事業団地球観測利用研究センターの浅沼市男博士が昨年12月に打ち上げに成功した人工衛星みどり2号の多目的センサーや環境省が富山県小杉町に設置した環日本海環境ウォッチシステムを始め、日本のリモートセンシングにより海洋観測の取組状況を紹介しました。
ユネスコ政府間海洋学委員会(IOC)のNEARGOOS(北東アジア地域地球規模海洋観測システム)の代表から、地域における共同研究の動向について、同じくIOCのHABの専門家、NOWPAPと同様の地域海行動計画である地中海行動計画のリモートセンシングセンターの所長から、それぞれの取り組み状況の報告がありました。
(3) CEARAC/FPMの委任事項(26日午前)
フォーカルポイント会合の目的・責務や運営規則を定める「委任事項」について討議し、若干の修正意見を取り入れて、採択されました。
(4) ワーキンググループの準備及び活動方針(26日午後~27日午前)
CEARACが担当する「赤潮を含む有害藻類異常繁殖(HAB)」と、「リモートセンシング(RS)による海洋環境の観測」について、CEARACの下に両テーマに関する2つのワーキンググループを設置し、今年の夏に第1回の会合を開くことになっているため、FPMでも2つの小グループに分かれてそれぞれワーキンググループ(WG)で議論すべき課題について討議しました。
HABのWGの検討議題としては、HABのモニタリング方法の標準化や、そのために必要な訓練や新技術の移転などがあげられました。
RSのWGの検討議題としては、技術的に可能で、またユーザーのニーズが高いと思われる富栄養化や油汚染について、その観測の実用化をめざした課題の特定と解決方法などが挙げられました。
(5) 2003年のCEARAC活動計画と予算(27日午前)
2003年の活動計画と予算(約1500万円)が承認されました。中心となる活動内容は、HABとRSに関するWGの開催とそれに向けての各種調査です。また、2004/2005年の骨子案が示され、これに対していくつかのコメントがなされました。
(6) その他の議題(27日午前)
CEARACをホストしているNPECから、7年前から富山県とNPECが取り組んでいる海辺の漂着ごみの調査結果について発表がなされました。UNEPのアドラー調整官より、この問題は今後NOWPAPとして取り組んでいくべきであるとのコメントがなされました。
(7) 議事概要の採択・閉会(27日午後)
午後には、三日間の話し合いの結果をまとめた報告書(議事概要)を採択して、会合は終了しました。