海草藻場分布マップ

NOWPAP海域の海草分布の評価

背景

Waycottら(2009)によると、世界全体で毎年110km2の海草藻場が消失しています。 Grechら(2012)は、NOWPAP海域を含めた北太平洋の温帯地域は全海域の中で脆弱性が最も高く、大きな問題点として都市化や港湾開発による埋め立て、海水温の上昇、海面の上昇の3つを挙げています。 しかし、Grechらの2012年の論文では、NOWPAP海域の海草藻場分布に関する十分な情報やデータは示されていません。

マニュアル開発とケーススタディの実施

CEARACは、2014年からNOWPAP地域の藻場分布に関する活動に着手しました。2015年に「衛星画像を用いた海草・海藻分布マッピングマニュアル」を作成しました。2015年~2016年にかけて、同マニュアルの有用性を検証するために、中国、日本、韓国、ロシアの専門家(下表)と共に、NOWPAP地域の選定海域においてケーススタディを行いました。ケーススタディの結果概要は、「NOWPAP海域における海草分布の評価に向けたフィージビリティスタディ報告書」(2018)に掲載されています。

専門家 所属 選定海域
中国

Dr. Dingtian Yang

State Key Laboratory of Tropical Oceanography, South China Sea
Institute of Oceanology, Chinese Academy of Sciences

Swan Lake
(Shandong Peninsula)
日本 Dr. Tsuneo Maeda
Dr. Wataru Matsumura
Dr. Genki Terauchi
Northwest Pacific Region Environmental Cooperation Center(NPEC) West part of Toyama Bay (Himi)
West Bay in Nanao Bay
韓国 Dr. Keunyong Kim
Dr. Jong-Kuk Choi
Korea Ocean Satellite Center, Korea Institute of Ocean Science and Technology

Deukryang Bay
(Jangheung County)

ロシア Dr. Vasily Zharikov Pacific Geographical Institute, Far Eastern Branch of the Russian Academy of Sciences Southwest coast out of the Peter the Great Bay

フィージビリティスタディ

CEARECは、海草藻場分布評価の対象域をNOWPAP海域全体に拡大することを目標に、2016年~2017年にかけて、フィージビリティスタディ(実現可能性調査)を実施し、文献レビュー・データベースの開発・コスト分析などを行いました。また、2017年8月に開催した第1回NOWPAP地域における海草藻場分布評価国際ワークショップにおいて、衛星画像を活用した藻場分布把握の可能性や、今後のNOWPAP 地域全体での藻場評価の活動計画について議論しました。同調査については、2018年に「NOWPAP海域における海草藻場分布の評価に向けたフィージビリティスタディ報告書」としてまとめました。その中で、時間・コスト・労力の面から、海草藻場分布マッピングの方法として、クラウドコンピューティングの利用、統一した解析手順の設定、無料で入手できるマルチスペクトラル衛星画像の分析を提案しました。

●文献レビュー
衛星画像を用いた海草分布マッピングに活用する現場データを収集するために、CEARACは、英語およびNOWPAP参加国言語で出版された海草藻場に関する文献レビューを行いました。その結果、中国、日本、韓国、ロシアの専門家は、1973年~2017年に出版された資料を収集し、CEARACがその情報を一覧に整理しました。文献一覧の参照先:第15回CEARAC FPM報告書(2017年)のAnnex VII「NOWPAP地域における海草藻場分布の評価に向けたフィージビリティスタディに関する報告書」

専門家 所属
中国

Dr. Dingtian Yang

South China Sea Institute of Oceanology, Chinese Academy of Sciences

日本 Dr. Teruhisa Komatsu Yokohama College of Commerce
韓国 Dr. Jong-Kuk Choi Korea Ocean Satellite Center, Korea Institute of Ocean Science and Technology
ロシア Dr. Vasily Zharikov Pacific Geographical Institute, Far Eastern Branch of the Russian Academy of Sciences

海草藻場分布マップ

CEARACでは、NOWPAP地域の専門家が収集した文献情報をもとに、海草藻場の分布をWeb-GISマップ(https://cearac.nowpap.org/map-webgis/)上に可視化しました。
「○」の数字とサイズは、分布の数を示しています。
地図を拡大すると、「〇」が海草種別に3種類のマーク  で示されます。
海草マークをクリックすると、詳細な情報(海草種、画像、文献の執筆者・出版年・タイトル、要約、衰退の報告、GISポリゴンデータの有無、位置)が分かります。

 
 
 
 
 
砂地の海草(アマモ属、ウミジグサ属)

アマモ(Zostera marina

コアマモ(Zostera japonica

スゲアマモ(Zostera caespitosa

オオアマモ(Zostera asiatica

タチアマモ(Zostera caulescens

ニラウミジグサ
Halodule uninervis

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アイコンB:岩礁の海草(スガモ属)

スガモ(Phyllospadix iwatensis

エビアマモ(Phyllospadix japonicus

 

 

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砂地の海草(ウミヒルモ属)

ウミヒルモ(Halophila ovalis

ヤマトウミヒルモ
Halophila nipponica

 

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Seagrass Mapperの開発 

NOWPAP海域における海草分布評価のためのフィージビリティスタディの結果を受け、CEARACは、衛星画像と現場データを用いて沿岸域の海草藻場をマッピングするウェブツールSeagrass Mapper を環境省とともに開発しました。このツールは、地球観測データを大規模に分析するクラウドベースのプラットフォームであるGoogle Earth Engineを利用しています。また、CEARACは、海草藻場に関する情報を提供するMapseagrass ウェブサイトも構築しました。

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